だれかに話したくなる本の話

史実だけ見てもわからない 直木賞作家・朝井まかてが語る「幕末という時代」

『グッドバイ』(朝井まかて著、朝日新聞出版刊)

出版界の最重要人物にフォーカスする「ベストセラーズインタビュー」。
第108回の今回は『グッドバイ』(朝日新聞出版刊)を刊行した朝井まかてさんが登場してくれました。

『グッドバイ』の舞台は、相次ぐ外国船の来航に揺れていた幕末の日本。長崎の油商「大浦屋」の娘・大浦慶(おおうら・けい)は先細る油商いに代わる新しい収益源として「茶葉」に目をつけます。売り込み先は外国。言葉もわからないし茶葉のことなんて何も知らない。無謀とも思える挑戦は、慶の人生を思わぬ方向に転がしていきます。

一人の商人の人生の因果と激動の時代が描かれたこの作品について、朝井さんはどんなことを語ってくれたのでしょうか。ここでは大浦慶の実像にさらに深く迫ります。

(聞き手・構成:山田洋介、写真:金井元貴)

グッドバイ

グッドバイ

長崎の油商・大浦屋の女あるじ、お希以―のちの大浦慶・26歳。黒船来航騒ぎで世情が揺れる中、無鉄砲にも異国との茶葉交易に乗り出した。

商いの信義を重んじるお希以は英吉利商人のヲルトやガラバアと互角に渡り合い、“外商から最も信頼される日本商人”と謳われるようになる。

やがて幕末の動乱期、長崎の町には志を持つ者が続々と集まり、熱い坩堝のごとく沸き返る。

坂本龍馬や近藤長次郎、大隈八太郎や岩崎弥太郎らとも心を通わせ、ついに日本は維新回天を迎えた。

やがて明治という時代に漕ぎ出したお慶だが、思わぬ逆波が襲いかかる―。

いくつもの出会いと別れを経た果てに、大浦慶が手に入れたもの、失ったもの、目指したものとは―。円熟の名手が描く、傑作歴史小説。