だれかに話したくなる本の話

夏休みに親子で楽しめる! 子どもの好奇心を刺激する「STEM教育」の入門絵本

子どもの将来のためにどんなことを学ばせるべきか。子どもの教育を考える親にとってこれは最大の関心事だろう。そんな子どもの教育に新たなトレンドが訪れている。

それが**「STEM教育」**だ。

**「STEM」とは、「Science(科学)」「Technology(技術)」「Engineering(工学)」「Mathematics(数学)」の頭文字を取ったもの。**理数系の学術領域に重点を置く教育方針を指し、今、世界で重要視されている。

2000年代に入り、インターネット、コンピューター、ロボット、AI(人工知能)などの分野は飛躍的な発展を遂げた。これからますます社会で重要な役割を担うこれらの領域について学ぶことは、現代の子どもにとって不可欠といえるだろう。ちなみに、昨今人気のプログラミング教育も、STEM教育の一つといえる。

そんな「STEM」への関心を高める一冊として注目されているのが『AI時代を生きぬく理系脳が育つ 実験でわかる科学のなぜ?』(コリン・スチュアート著、江原健訳、ガリレオ工房監修、誠文堂新光社刊)だ。

本書は「STEM教育の具体的な実践方法」を紹介した「国内初」の書籍だ。しかも、子ども向けの絵本となっており、現代科学の基礎から先端までがわかりやすく概観できる。原書はSTEM教育の先進国、イギリスで出版されており、絵柄もポップで親しみやすいのが特徴だ。

本作は全4冊のシリーズで構成されており、本書では「STEM」のうち「S」、つまり、サイエンス(科学)の領域について学べる。本書の中から、子どもに「科学っておもしろい!」と思わせる実験やトピックを紹介していこう。

■卵のカラだけ溶けてなくなる?「化学反応」の実験

物質の結合が壊れたり、新しい結合ができたりするのが「化学反応」だ。しかし、これを難しい言葉のまま説明しようすると、子どもの興味は科学から離れていく。
そこで、まずは子どもが興味を持つような実験をしてみてはどうだろうか?

本書から、卵が“丸裸”になる化学反応の実験を紹介しよう。

●必要なもの
・500mLのプラスチック、またはガラスの容器(蓋付きで透明なもの)
・酢:1L
・生卵:1個

●実験の手順
1.酢の半量を容器に注ぎ、生卵をそっと入れる。
2.蓋をして24時間置いておく。
3.卵を割らないように酢を捨て、残りの酢を注ぐ。
4.そのまま数日間置き、卵が変化していく様子を定期的に観察する。

酢に含まれる酢酸と、卵の殻の炭酸カルシウムが化学反応を起こすと、殻が少しずつ溶けていく。その過程を観察すれば、子どもは不思議に思いながら、「どうしてこうなるのか?」を知りたくなるだろう。

■子どもに説明できる?「光の屈折」

もうひとつ、子どもが楽しみながらできる「光の屈折」に関する実験を紹介しよう。

「虹をつくろう」
●必要なもの
・浅いトレー(料理用の受け皿など)
・水
・小さい鏡
・白い紙

●実験の手順
1.日のあたる場所にトレーをおき、半分くらいまで水を入れる。
2.鏡の下半分が水につかるように、トレーのはしに立てかける。
3.水中の鏡に太陽の光があたるように、トレーの位置をととのえる。
4.鏡にあたった日光がはね返る位置で白い紙を持つ。
5.紙の向きや高さを少しずつ変えて、虹がよく見えるようにする。

光は、遮るものがなければまっすぐに進むが、水に向かって斜めに光が入ると屈折する。これは密度が違う二つの物質の間を進むときに見られる現象で、虹が見えるのは、この光の屈折が原因だ。蜃気楼なども光の屈折によって見られる。また、日常的なところではお風呂に入ったときに指の長さが違って見えるのも光の屈折が原因だ。
こうした身近な「科学」から、子どもの興味を喚起させるのもいいかもしれない。

■社会を変える「バイオテクノロジー」の世界

科学は、目の前でその現象を見せれば、子どもの好奇心を刺激する。その単純な好奇心は、学ぶこと、ひいては働くことの基盤にもなる大切な感覚だ。

だが、その一方で、科学にはアンビバレンツな側面もある。
その一例が、食品、医療などの分野で研究が進む「バイオテクノロジー」の世界だ。

例えば、遺伝子組み換えバクテリアは、植物のゴミに加えることで燃料やお酒用のエタノールをつくることが可能だ。また、医療の分野では様々な種類の細胞に変化することができる「幹細胞」のクローンをつくって、必要な細胞を生み出す研究も行なわれている。

この分野は将来、社会的に大きなインパクトをもたらす可能性の宝庫だ。しかし、同時に倫理的な問題や自然界に与える影響について懸念する声もある。
こうした広い視野を子どもにどのように持たせていくか。これは、親や大人たちが考え、なすべき仕事なのかもしれない。その意味では、本シリーズは子どもだけでなく、大人にも「STEM」の入門書として使える絵本だ。

本シリーズの「Science(科学)」「Technology(技術)」「Engineering(工学)」「Mathematics(数学)」の中から、自分の子どもが興味を持ちそうな領域からシリーズを通して読んでいくと面白いかもしれない。また、夏休みに本書で紹介されている「実験」を親子で一緒に楽しむのもよさそうだ。

(新刊JP編集部)

実験でわかる科学のなぜ?: AI時代を生きぬく理系脳が育つ

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