だれかに話したくなる本の話

【「本が好き!」レビュー】『たたみかた 創刊号 (福島特集)』

提供: 本が好き!

<社会文芸誌>ってなんだろう。その疑問に、編集長・三根さんが雑誌を作られた理由を語った「創刊するまでの話」がヒントをくれた。

じぶんの「正しさ」がどこからやってきたのかも知らないで、
他者の「正しさ」を理解しようとすることができるだろうか?

分断、対立、という言葉を耳にしない日はない。世の中の意見の対立が激しくなったのは、自分の考えを声高に主張するだけで、相手の声に耳を傾けない人たちが増えたからではないかと思う。
雑誌のコンセプトは「見る、聞く、語る、考える。そういう当たり前の行為に意識を向ける。」である。
なぜ自分がそれを正しいと思うのか、自分の心と対話してみようではないか。自分が何を大切に思うのか、それを考えるきっかけになってくれれば、ということなのだろう。

創刊号の福島特集は、震災後の福島と何らかの形で関わりを持った人々の、エッセイ、インタビュー、対談などで構成されている。特集に限らず記事の中では、その人の経験がなければ語れない印象的な言葉に出会う。ライターや記者などマスコミ関係者の他に、哲学者、禅僧、職人さん、人選の幅広さが雑誌に複合的な視線を提供しているようにも思う。こんな仕事があるのかと驚いたのは「比類なき人類の悲劇と呼ばれた『ソマリア』で、テロ組織への加入・脱退に挑む人」永井陽右さん(25)である。

最もニーズが高いのに、誰も手をださないことを僕がやる。永井さんの仕事内容の過酷さを知ると、彼の考え方に尊敬の念が湧く。

みんな論理より、感情の方が大事だと思い過ぎてるなって。でも、それでは平行線のままでしょう。だから僕らは、非論理的になってしまう人間の性質も含めて包み込まないといけないんですよね。『それを踏まえて、じゃあ、どういう意見だったらみんなが納得しうるのか?』を思考するんです。

私は常々、心に残った文章に付箋を貼ることにしているのだが、140ページの雑誌の中に12枚あった。対談で編集長が語った言葉も、そのうちのひとつだ。

言葉たちはいつか“語り”となり、文学などに託されてゆく。そんな作品が、巡り巡ってまた誰かの助けになるんですよね。そんな言葉を探しながら『たたみかた』を育ててゆきたいと思います。

<社会文芸誌>と名乗られる想いに、触れた気がする。

(レビュー:Wings to fly

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『たたみかた 創刊号 (福島特集) 』

たたみかた 創刊号 (福島特集)

美容文藝誌『髪とアタシ』の出版社から待望の新雑誌が登場。30代のための社会文芸誌『たたみかた』創刊!

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