だれかに話したくなる本の話

ジョブズは“自分の道を突き進むまっすぐな男” 『スティーブ・ジョブズの流儀』編集者・常盤亜由子さんインタビュー

10月23日にランダムハウス講談社から刊行された『スティーブ・ジョブズの流儀』。本書は、ビジネスを通してスティーブ・ジョブズの生きざまが語られた1冊として高い評価を得ている。(書評はこちら

 では本書は、あまたある「ジョブズ本」とは一体何が違うのか。本書の担当編集者であるランダムハウス講談社の常盤亜由子さんに、『スティーブ・ジョブズの流儀』制作の舞台裏をうかがった。

◇「ジョブズの姿を伝えるコピーを作るために、2週間以上考え込みました」

 常盤さんは東洋経済新報社を経て、現在ランダムハウス講談社でビジネス分野を中心とするノンフィクションを手がけている。『ブルー・オーシャン戦略』『マイクロソフトでは出会えなかった天職』など、これまで手塩にかけて世に出してきた書籍の多くがベストセラーとなっており、まさにビジネス書業界のヒットメーカーといえる存在だ。

 そんな常盤さんが何故、「スティーブ・ジョブズ」という人物の書籍を手がけようと思ったのか。それは、彼女自身がジョブズを興味深く見ていたことにある。

 ジョブズはアップルコンピュータ社の設立者でありながら、一度は会社を追放され、厄介者扱いをされてきた一面があった。人の言うことを聞かないし、すぐに社員をクビにする。やりたいことだけやっているというジョブズ像が世間に広く知れ渡っていた。

 しかし、常盤さんはそこにひっかかりを感じていた。「それは、マスコミによって面白おかしく書かれてしまった結果かもしれない。もし、アップル社やジョブズのことをよく知る人物が、従来の見方とは違う視点から書いたジョブズ本があったら、すごく面白いんじゃないかと思っていました」。そんな折に、まだ書き上げられていない原書『Inside Steve’s Brain』の原稿に出合った。

 ジョブズのイメージを変える――それが、常盤さんが本書に宿した使命だ。それは、例えば帯のキャッチコピーにも色濃く表現されている。

ビジネスとは、生きざまの証明。世界を変えられると本気で信じる人間こそが本当に世界を変える

 このコピーは常盤さんが2週間以上考え込み、生み出したものだ。仕事を通して自分というものを世に知らしめているジョブズの姿をありありと表現しており、気迫に満ちた彼の生きざまがストレートに伝わってくる。
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